保険戦略を見直すべき

 老後の医療費、介護費用や生活費を確保する目的で、民間のさまざまな保険に加入しようと思っているひとや、すでに入っているひとが大勢います。しかしその保険、本当に頼りになるのでしょうか?
 たとえば終身医療保険です。
 60歳ないし65歳で保険料を払い終わりにすれば、老後の備えに最適と思ってはいませんか。しかし保険の契約書の中身は、時代がどう変化しようとも、一字一句たりとも変化しません。
 今や「人生100年時代」といわれるようになりました。50歳以上のひとの大半が、まさか自分たちが関わる話だとは思っていません。しかし、50歳のAさんが終身医療保険に加入したとしても、実際に保障が必要になるのは30年後、40年後かもしれません。その間に医療そのものが大きく変わってしまうはずです。
 保険は、契約した時点で保障内容が決まってしまい、約やっ款かんに書かれていないことには対応してくれません。「保険は陳ちん腐ぷ化かする」という現実を意識する必要があります。

 

 

 

あなたのゴールは何歳?

 あなたは今、何歳ぐらいを人生のゴールだと考えているでしょうか。男性なら75歳から80歳、女性でも80歳から85歳ぐらいでしょうか。90歳以上と答えるひとは少数派ですし、100歳以上というひとは、ほとんどいないはずです。
 一方、厚生労働省が発表した2017年の日本人平均寿命は、男性約81・1歳、女性約87・3歳でした。
 もちろんみなさん、それはよくご存じです。しかしそれでも「自分は例外だ」と思っているのです。

  • 自分には持病がある。
  • 若いころ不ふ摂せっ生せいしていた。
  • タバコがやめられない。
  • 短命の家系だ。

 理由はいくらでも付けられます。
 しかし残念ながら、それらの理由は大きな影響力を持ちません。みなさんの多くは、想定年齢を大幅に超えて生き続けることになるのです。

90 年以上生きるのは確実

 ところで「平均寿命」とは何でしょうか。定義によれば、今年生まれた0歳児が、今後何年生きられそうかを、各歳の死亡率をもとに計算した数字です。計算式もしっかりと定義されています。
「平均余命」という言葉もあります。たとえば50歳男性の平均余命とは、存命中の50歳のひとがあと何年生きられそうかを、50歳以上の各歳の死亡率に基づいて計算したものです。ですから、平均寿命は「0歳児の平均余命」と言い換えることもできます。
 計算に用いる各歳の死亡率は、現在の数字に過ぎません。ところが予防や医学の進歩によって、死亡率は毎年少しずつ改善されています。そのため平均寿命も平均余命も少しずつ延のびているのです。
 なんだか漠然とした説明になってしまいました。もっと単純に考えることにしましょう。
 1967年生まれの男性を例にします。仮にAさんとしましょう。Aさんは(生存していれば)2017年に50歳になりました。一方、2017年における男性の平均寿命は、先ほど書いたように、約81・1歳でした。平均寿命が変化しないとすれば、Aさんはあと31年生き続けると(つまり81歳に到達すると)平均寿命にほぼ追いつくことになります。

 

ところが平均寿命は延び続けています。過去30年間で、男性0・18歳/年、女性0・2歳/年の割合で延びています。そこで、今後もこの割合で延び続けると仮定すると、Aさんが81歳になった時、平均寿命のほうは、なんと86・7歳になっているのです。ですから、Aさんが「自分の人生は81歳ぐらい」と思って老後の準備をしていると、途中で資金がショートするなど、困った事態に直面することになるのです。
 では、Aさんが「逃げる平均寿命」に追いつくのは何歳の時でしょうか。計算してみると87・9歳という結果になりました。ですから、ややこしい定義は脇わきに置いて、「1967年生まれの男性の平均寿命は87・9歳」と言ってしまっても、さほど間違いではありません。というよりも実用上はこちらのほうが分かりやすく、役に立ちます。
 同様に1967年生まれの女性の平均寿命は94・9歳、1980年生まれの男性の平均寿命は90・8歳などとなります。

 

50 %生存年齢を見る

 しかし、それで安心してはいけません。平均寿命は「同い年のひとが半分に減る年齢」と思っているひとが結構います。平均という言葉に惑まどわされているのです。ところが実際には、「平均寿命≒60%生存年齢」となっています。若年で亡くなるひとが、全体の平均を押し下げているのです。
 同い年のひとが半分になる「50%生存年齢」は、「平均寿命+約3歳」です。また4分の1になる「25%生存年齢」は、「平均寿命+約9歳(女性は約8歳)」となります。

 

 先ほどのAさんの例でいうと、50%生存年齢が90・9歳、25%生存年齢が96・9歳です。Aさんが自分の健康に気を遣つかうひとなら、順調に97歳以上まで生き続けたとしても不思議ではありませんし、100歳超えも夢ではありません。
 またAさんには同い年の奥さん(B子さんとしましょう)がいるとすると、B子さんの25%生存年齢はなんと102・9歳です。大病さえしなければ、100歳を超える可能性はかなりありそうです。
 もちろん、これは単純な予想に過ぎません。しかし、今や世界中の科学者が、人間の寿命を延ばすことを目指した研究にしのぎを削っています。長生きのための生活習慣や食事・栄養の謎が次々と解明されていますし、老化を遅らせる医薬品の開発も進められています。ですからこの先、表に示した寿命がもっと延びる可能性はあっても、縮ちぢむ可能性は低そうです。
 現在50歳以下の人たちは、すでに人生100年時代に突入しつつあるということです。また60代のひとでも、90歳を超える可能性が大ですし、とくに女性では100歳を超えるひとが続々と出てきます。
人生100年時代に合わない商品
 こうした長寿の時代においては、そもそも保険という仕組みそのものが適しません。
 保険とは、本来はめったに起きないが、一度起きてしまうと個人では負おいきれない経済的リスクを、多数の人間に分散して支え合うというものです。ところが病気や介護は、年齢が上がるほどリスクが高まります。極端に言えば、リスクだらけです。だから保険会社としては、高齢者向けの商品の保険料をどんどん上げるか、保障内容を減らすしかないのです。